「飛び込み営業は、元気よく挨拶することが基本だ」

入社したての頃、先輩にそう教わった。元気に挨拶していれば、なんとかなる。それを信じて、私は毎回全力で挨拶していた。

しかし、結果は逆だった。

ドアを開けた瞬間、相手の顔に「うわ、営業が来た」という表情が浮かぶ。話を聞いてもらう前に、すでに心のドアが閉まっている。

元気よく挨拶しているのに、なぜ避けられるのか。

当時の私には、まったく理由がわからなかった。

なぜ避けられたのか?

答えはシンプルだった。

元気よく挨拶することが問題なのではない。相手の状態と、自分の状態がズレていたことが問題だったのだ。

たとえば、静かに仕事に集中している相手に、テンション高く挨拶する。それは相手にとって、突然大音量の音楽をかけられるようなものだ。内容以前に、その「ズレ」が警戒心を生んでいた。

営業の世界では「第一印象が大事」とよく言われる。しかしその第一印象を決めているのは、挨拶の元気さではなく、相手との状態のマッチングだった。

ステイトとは何か

この「状態のマッチング」には、名前がある。ステイトだ。

コーチングの世界で使われる概念で、簡単に言うとこうだ。

相手がポジティブな状態なら、自分もポジティブを1.5〜1.8倍に。 相手がネガティブな状態なら、自分もトーンを落として1.5〜1.8倍に合わせる。

数字で表現するとシンプルだが、これが意外と難しい。

なぜなら、多くの営業マニュアルは「常に元気よく」を前提にしているからだ。相手の状態を見る前に、自分のテンションを固定してしまっている。

そしてここに、もう一つ落とし穴がある。

自分のデフォルト値を知らないと、ステイトは機能しない。

自分のデフォルト値を知ることの大切さ

私はコーチングスクールでステイトを学んだとき、講師にこう言われた。

「相手の状態に1.5〜1.8倍で合わせてください」

素直に実践した。しかし、何かがおかしい。相手との距離が縮まらないのだ。

しばらくして気づいた。

私のデフォルト値が、すでに高かったのだ。

もともとエネルギーが強いタイプの私が、さらに1.5倍にすると、相手の状態を大きく超えてしまう。結果、またズレが生まれていた。

解決策は逆だった。0.8〜0.9に抑えることで、はじめて相手とマッチングできた。

つまり、ステイトの出発点は「相手を観察すること」ではなく、**「まず自分のデフォルト値を知ること」**だ。

あなたのデフォルト値は高いですか?低いですか?

それを知るだけで、明日の営業が変わる。

明日からできる一つのアクション

難しく考えなくていい。明日の飛び込み営業で、一つだけ試してほしいことがある。

ドアを開ける前に、相手の状態を3秒観察する。

相手は忙しそうか。静かに仕事をしているか。それとも明るく動き回っているか。

その状態を見てから、自分のトーンを決める。

元気そうな相手なら、元気に挨拶する。 静かな相手なら、トーンを落として静かに挨拶する。 真剣に仕事している相手なら、こちらも真剣なトーンで入る。

たったこれだけだ。

私はこれを意識した日から、「うわ、営業が来た」という顔をされることがなくなった。挨拶の言葉は変えていない。変えたのはトーンだけだ。

相手を見ること。相手に合わせること

「元気よく挨拶すれば、なんとかなる」

その言葉を信じていた私が、一番最初に学んだことは、元気よくすることではなかった。

相手を見ること。相手に合わせること。

たったそれだけで、営業の入り口が変わった。

飛び込み営業は、断られることの連続だ。しかし、その断られ方が変わると、営業が少し楽しくなる。「うわ、営業が来た」から「話だけ聞こうか」に変わる瞬間が増えてくる。

その積み重ねが、営業を好きになるきっかけになる。

次回は、相手のタイプによって合わせ方がどう変わるかを掘り下げます。同じステイトでも、相手によってやることが変わる。その話を次回書きます。

相手をみること・相手に合わせること

たったそれだけで、営業の入り口が変わる。

ABOUT ME
ぽんず
124社落ちた元事務職が、飛び込み営業で全国1位2回。営業歴17年の現役営業が、「売れない」を構造で解剖している。