訪問10件、情報0件。それは営業じゃなくて、ただの散歩だ。
飛び込み営業で「忙しい」と言われた時、あなたはどうするか
押し続けるか。謝って引くか。
多くの新人はこの二択しか持っていない。そしてどちらを選んでも、その日の訪問は「失敗」として心に残る。
でも本当の問題は、対応の仕方じゃない。ゴールの設定が、最初からズレていたのだ。
なぜ最初の一言で死ぬのか
新人営業に「今日の目標は?」と聞くと、たいてい「訪問10件」と答える
訪問することが、ゴールになっている。
だから「忙しい」と言われた瞬間に終わる。訪問はした。でも何も起きなかった。心が折れるのは当然だ。終わりを間違えた場所に置いているのだから。
もう少しマシな新人は「契約を取る」をゴールにしている。でもこれも危うい。飛び込みで、アポもなく、突然来た営業マンの話をすんなり聞いて契約する確率がどれだけあるか。ゴールが高すぎると、毎日失敗し続けることになる。
訪問件数をゴールにすれば、行くだけで消耗する
契約をゴールにすれば、断られるたびに折れる。
では、何をゴールにすればいいのか。
1訪問、1情報。それだけでいい。答えはシンプルだ。1訪問で、1つ情報を取る。それだけをゴールにする。契約でも、アポでもない。たった1つの情報だ。
今使っている他社のサービス名でもいい。取引期間でもいい。担当者の名前でもいい。「忙しい」と言われた事実でさえ、情報だ。
この小さなゴールが設定されていると、何が変わるか。
「忙しい」と言われても、失敗じゃなくなる
1つ聞けたら、その日の訪問は成功だ。門前払いでも、受付の雰囲気を観察できたなら、それも成功だ。
訪問が「消耗」から「収集」に変わる。
そしてもう一つ、大きな変化が起きる。情報が積み上がると、次の訪問の質が変わる。「前回、他社と10年取引されているとおっしゃっていましたが」という一言が言えるようになる。これがPDCAだ。感覚じゃなく、情報で営業が回り始める。
引き際に、1つだけ残す。では具体的に、どう動くか。
「忙しい」と言われた瞬間、売れない営業は二択で迷う。押し続けるか、謝って引くか。どちらも正解じゃない。押せば嫌われる。完全に引けば何も残らない。
売れる営業は、第三の選択肢を持っている。
「忙しいですよね。出直してきます。ただ、1点だけ教えてください。」
これだけだ。
引く。でも、1つだけ残す。
なぜこれが機能するか。「出直してきます」という言葉で、相手は警戒を解く。空気を読める人間だと判断する。その一瞬の隙に、1つだけ質問を置く。忙しい相手でも、1点だけなら答えてくれることがほとんどだ。
そしてここからが重要だ。
1点だけ聞くつもりが、そこから会話が続くことがある。相手が少し話してくれることがある。それを狙って押し込んではいけない。でも、怖がって何も聞かないのも違う。引き際に、1つだけ置いてみる。それができるかどうかが、売れる営業と売れない営業の分岐点だ。
では、その「1つ」に何を選ぶか。
たとえば「今、保険はどちらをお使いですか」でもいい。「取引されているところはどれくらいになりますか」でもいい。相手が「他社と取引中だから」と言うなら、「どれくらいになりますか」と聞く。「ずっとそちらで」と言うなら、「過去に変えたことはありますか」と聞く。変えたことがあるなら、「その時はどんな理由で」と聞く。
断り文句が、情報の入り口に変わっていく。
断られてからが、スタートだ
新人のうちは、断られることがゴールの失敗に見える。訪問して、「忙しい」と言われて、何も持ち帰れなかった日は、全部失敗に見える。
でも違う。
ゴールを「1つの情報」に置いた瞬間から、断られることの意味が変わる。断られながらも、1つ聞けた。断られたから、次に何を聞くか考えられる。断られた数だけ、相手のことがわかっていく。
飛び込み営業が怖いのは、結果が見えないからじゃない。ゴールが見えていないからだ。1つの情報をゴールにした瞬間、訪問は「怖いもの」から「確かめに行くもの」に変わる。
断られることに慣れた時、営業はようやく面白くなる。
