クロージングで迷う営業ほど、順番を間違えている
「よし、今日こそ決めるぞ」
そう意気込んでクロージングに臨んだのに、また「検討します」で終わった。
トークを磨いた。締め方も練習した。それでも決まらない。
その原因は、クロージングの質ではない。順番を間違えているからだ。
クロージングは最後の一手だと思っていないか
多くの営業が、こう考えている。
「ヒアリングして、提案して、最後にクロージングで決める。」
この順番自体は間違っていない。ただ、クロージングを「決める瞬間」だと思っているなら、それが間違いだ。
私の体感では、アポイントで提案する時点で、すでに8割決まっている。
残りの2割が、クロージングで決まる。
では、その8割はいつ、どこで積み上げられているのか。
アポ時点で8割決まっている理由
私がやっている法人営業は、プッシュ型だ。欲しいと言っていない相手に、こちらからドアノックしていく。最初から「買います」という顧客はいない。だから、最初にやることはクロージングではなく、関係構築だ。
何度も訪問して、顔を覚えてもらう。雑談を重ねて、信頼を積み上げる。そして繁忙期が明けたタイミング、あるいは競合とトラブルがあったタイミングで、ようやくアポイントを取る。この段階で、相手の中にはすでに「この人なら話を聞いてもいい」という土台ができている。
アポが取れた時点で、8割は終わっている。
残りの2割は、「何で押すか」の精度で決まる
残り2割は「何で押すか」の精度
クロージングで迷う営業は、「どう話すか」を考えがちだ。
言葉の選び方、締めのトーク、反論への切り返し。
でも本当に考えるべきは、「この人は今、何を解決したいのか」と「この人には何が刺さるのか」の2点だ。
まず相手の会社が、今どのフェーズにいるかを見極める。
組織が大きくなってくると、属人化を脱却したいというフェーズが来る。そうなると「業務効率を上げたい」「余計な手間をなくしたい」という課題が出てくる。
一方、まだ拡大フェーズにある会社は「とにかく売上を上げたい」という方向に向いている。
コスト削減で押すのか、売上拡大で押すのか。この見極めが、クロージングの方向性を決める。
そしてもう一つ。同じ「コスト削減」を伝えるにしても、相手のタイプによって刺さる言葉は違う。
訪問したらまずここを観察しろ(タイプ判定チェック)
クロージングの前に、相手のタイプを見極める必要がある。
タイプの詳しい見極め方については、こちらの記事も参考にしてほしい。
→同じ挨拶なのに、なぜか空振りする――相手タイプ別ステイトの合わせ方
タイプの見極めは、難しくない。訪問した瞬間から、ヒントはそこら中に転がっている。
見るべきポイントは3つだ。
①社長本人の外見
高級車に乗っている、高級時計をしている、身なりに明らかにこだわりがある。こういう社長は、熱量タイプであることが多い。成果や地位を重視し、勢いとビジョンで動く。
②オフィスの壁と装飾
壁に「売上ランキング」や「MVP表彰」が貼ってあるなら、これも熱量タイプの上司が作った文化だ。従業員を競わせることで成果を出そうとしている。
一方、企業理念やビジョンが掲げてある会社は、共感タイプの中でも「理想の未来」を大切にしているタイプが多い。社員や家族の写真が飾ってある会社は、「みんなの幸せ」を軸に動いている。
③会話の中身
「効率よくしたい」「無駄を省きたい」「数字で見せてほしい」——こういった言葉が自然に出てくる相手は、論理タイプだ。外見やオフィスではなく、会話の中に判断材料がある。
口数が少なく、自分からあまり話さない相手は、内省タイプの可能性が高い。
タイプ別の背中の押し方
相手のタイプが読めたら、あとは押し方を合わせるだけだ。
熱量タイプ
ビジョンと勢いで押す。「この波に乗りましょう」「他社はもう動いています」という言葉が刺さる。数字よりも、勢いと熱量で背中を押すイメージだ。迷っている時間がもったいないと感じさせることがポイントになる。
共感タイプ(理想未来型)
会社のビジョンや理念に絡めて押す。「御社が目指している姿に、一歩近づけます」「仕組み化することで、理想の組織に近づけます」という方向で話す。相手が描いている未来を、一緒に言語化するイメージだ。
共感タイプ(仲間感型)
「社員の皆さんが喜びます」「現場の負担が減ります」という言葉が刺さる。この社長は従業員を大切にしていることが多いので、導入によって「誰が幸せになるか」を具体的に伝えることが効く。
論理タイプ
数字とグラフで押す。感情的な言葉は逆効果になることもある。中長期でコストがどう変わるか、売上にどう影響するかを、資料で視覚的に見せる。「感覚」ではなく「根拠」で納得させることがゴールだ。
内省タイプ
クロージングの席にそもそも出てこないことが多い。現場担当者として窓口にはなっているが、決裁権は持っていないケースがほとんどだ。この場合は、無理にクロージングしようとしない。次の章で説明する方法に切り替える。
決裁者が目の前にいない時の動き方
目の前の担当者が、決裁権を持っていないケースは多い。
そういう時に焦ってクロージングをかけても、「上に確認してみます」で止まる。そのまま立ち消えになるパターンだ。
だから、まずこの2つを聞く。
「この話を耳に入れておいた方がいい方は、他にいらっしゃいますか?」
「もし導入するとしたら、ハードルになることって何かありますか?」
この2つの質問で、陰のボスが誰かが自然と出てくる。「一応、上司に確認が必要で……」という答えが返ってくれば、そこが本当の決裁者だ。
ハードルを聞く質問は二重に機能する。障害を事前に潰せるだけでなく、決裁構造が見えてくる。
陰のボスが特定できたら、資料はそのボスのタイプに合わせて作る。
目の前の担当者に「これを上司に見せてください」と渡す資料が、実質的なクロージングになる。だから資料の設計は、決裁者のタイプに徹底的に合わせる。熱量タイプの上司なら勢いとビジョン、論理タイプなら数字と根拠。担当者向けではなく、会ったことのない決裁者を動かす資料を作るイメージだ。
クロージングは、最後の一手ではない。
誰に、何を、どう届けるかを設計するプロセス全体が、クロージングだ。
